マクロ経済の基本:GDP(国内総生産)について学ぶ

教育

よく新聞やニュースに出てくるキーワードにGDPというものがありますよね。なんとなく、景気を表す基準のようなものであるということはわかるのですが、じゃあ具体的に何をもとに計算され、その値が大きければ何が良くなるのか、私も含めて理解している方は少ないかと思います。この記事では、たろう先生とゆいちゃんの会話を通じて、GDPについて深堀していきたいと思います!

GDPの基本的な概念

ゆいちゃん、今日はGDPについてお話ししようか。
GDPというのは、「国内総生産」のことで、ある期間内にその国で作られたモノやサービスの全てを合わせた価値のことなんだよ。

へぇ~、全部の価値のことなんだね。でも、その国で作られたモノやサービスってどんなものがあるの?

例えば、日本で1年間に作られた車や食べ物、そしてみんなが利用する電車や病院のサービスなどが挙げられるよ。
たとえば、ゆいちゃんのお父さんが車を買ったとするよね。その車の値段が200万円だとすると、その200万円はGDPの一部になるんだ。

じゃあ、その車を買うときに、下取りとして買い取ってもらった車の代金もGDPに含まれるの?

実は、下取りに出した車の代金はGDPには含まれないんだ。これには理由があるんだよ。
GDPには「新しく作られたもの」や「新しく提供されたサービス」だけが含まれるんだ。
下取り車は、すでに一度GDPにカウントされたものだから、新しく作られたものではないんだ。

へぇ~、そうなんだ。GDPがいくらなのかを出すための計算って難しそうだね

GDPを計算するのはかなり難しくて、その問題については別の章で取り上げているよ。
でも、経済の専門家や政府の機関がしっかりと計算した結果を公表してくれるから、ゆいちゃんはその数字だけを見れば大丈夫だよ。

計算とかって苦手だけど、計算の仕方って色々あるの?

実は、GDPを計算する方法は視点ごとに分けて3つあるんだよ。
1つ目は生産法。これは生産者からの視点で、ある国で生み出された「モノやサービス」の総額を足し合わせる方法だよ。
2つ目は支出法。これは消費者からの視点で、人々が実際にお金を使って買ったモノやサービスの合計を計算する方法だよ。
3つ目は所得法。これはお金を稼いだ人の視点で、モノやサービスを作ることで得られた「お給料」や「利益」の合計を計算する方法だよ。
どの計算方法をとっても、原則的に同じ金額になるんだよ。

新聞やニュースとかで言っているGDPは、どの計算方法を使っているの?

新聞やニュースで出てくるGDPの数字は通常、支出法を使っていることが多いんだ。
これは、消費者の動きや企業の投資などがわかりやすいから、経済の健康状態を理解するために使われることが多いんだ。
沢山消費するっていうことは景気が良いということだからね。
ニュースで「今年のGDPは○○兆円です」って聞いたときには、基本的にはこの支出法で計算された結果だと思っていいよ。

へぇー、じゃああたしも新しいスマホ買ってもらおうかな。GDPを増やすためだからって言って

ゆいちゃん、いいアイデアだね!
ただ、本当にスマホが必要かどうかをちゃんと考えて、必要だったらお願いしてみるのがいいかもね。
経済のためにお買い物をするのは大切だけど、無理にたくさん買う必要はないんだよ。

名目GDPと実質GDP

ゆいちゃん、GDPには物価の影響を反映するかどうかによって2つの種類があるんだよ。

物価って、お店屋さんで売っている物の値段のこと?

そうだね。たとえば、ゆいちゃんがコンビニでアイスクリームを買うとき、そのアイスクリームの値段が150円だとしたら、その150円は物価が決まる基準の1つなんだ。
でも、物価にはアイスクリームとかのモノだけではなく、サービスも含まれるよ。
全てのモノとサービスの平均値をもとにして、物価が決まるんだ。

物価って変わったりするの?

うん、ゆいちゃん、物価はよく変わるんだよ。
詳しく説明すると難しいから、簡単に説明するね。
物価は売りたい人と買いたい人のバランスで決まるんだ。
例えば、アイスクリームを買いたい人が多ければ値段は上がるし、少なければ値段は下がるんだよ。

じゃあ、物価が変わっちゃうとGDPの計算結果も変わるのかなぁ

そのとおりだよ。
物の値段が高くなると、同じ量のモノやサービスを売っても、合計の金額が増えるからGDPも増えることになる。
この結果をそのまま表したのが名目GDPなんだ。

でも売った数が変わらないのに、GDPが増えるってなんかズルしている感じ

ゆいちゃん、そうなんだよ。
経済が実際にどれだけ成長しているかを正確に見るためには、物価の影響を取り除いて計算してあげる必要があるんだ。
そうして計算した結果を表したのが実質GDPなんだ。
ちなみに、物価の影響を測るためにはGDPデフレーターというものが使われるよ。

見た目よりも中身が大事なんだね!

その通りだね!
経済では見た目と中身が違っていることが他にも沢山あるんだ。
いつも中身を見るように心掛けておくことが大事だよ!

GDPの役割

GDPを見ると何がわかるの?

GDPを見ると、いろんなことがわかるんだよ!
国の経済の大きさや経済の成長度合い、生活の豊かさなどの目安がわかるんだ。

経済の大きさ

GDPが大きいほど、その国の経済力も大きいということなんだ。
例えば、アメリカや中国なんかはGDPがとても大きいから、世界でトップクラスの経済大国ということなんだよ。

お金持ちの国ランキングなんだねー。日本は何番目にGDPが大きいの?

IMF(国際通貨基金)によると、名目GDPベースでは2023年時点でアメリカ、中国、ドイツに次いで4番目だよ。

順位GDP
1米国$28,781.08B
2中国$18,532.63B
3ドイツ$4,591.10B
4日本$4,110.45B
5インド$3,937.01B
6英国$3,495.26B
7フランス$3,130.01B
8ブラジル$2,331.39B
9イタリア$2,328.03B
10カナダ$2,242.18B
出典:International Monetary Fund(国際通貨基金)2024年4月世界経済見通し

経済の成長

同じ国のGDPを年ごとに比較してみた場合、前年より増えている場合は経済が成長していることになるんだ。
逆に減っている場合は経済の元気が少なくなっているかもしれないんだよ。

やっぱり一番元気のいい国はアメリカなのかなぁ

実はそうでもないんだ。
成長率をグラフで表してみるとよくわかるよ!

出典:International Monetary Fund(国際通貨基金)2024年4月世界経済見通し

インドがトップなんだー。人口が多いからお金使う人も多いのかなぁ

インドは人口が多いことに加えて、IT産業やサービス業の発展が目覚ましいんだ。
国内外からの投資が増えていることも、成長している大きな要因なんだよ。

生活の豊かさ

GDPをその国の人口で割った場合、1人当たりのGDPが出せるんだ。
1人当たりのGDPが大きいほど、経済的に豊かな生活が送れているということになるんだ。

へぇ~、なんだか一番身近に感じるデータだね

そうだね!これが高い数字だと、その国でたくさんのモノやサービスが作られていて、人々がそれを享受できていることを意味するんだ。
ランキング表を出してみるよ!

順位GDP (一人当たり)
1ルクセンブルク$131,384.16
2アイルランド$106,058.58
3スイス$105,668.98
4ノルウェー$94,659.92
5シンガポール$88,446.92
6米国$85,372.69
7アイスランド$84,593.94
8カタール$81,399.52
9マカオ$78,962.24
10デンマーク$68,897.55
38日本$33,138.16
出典:International Monetary Fund(国際通貨基金)2024年4月世界経済見通し

経済の大きな国がほとんど入っていないのね

経済の大きさトップ10の国のうち、米国しか入っていないよね。
必ずしも、GDPが大きい国ほど国民一人ひとりが豊かだとは限らないということなんだね。

GDPの限界

経済成長を測る方法としての限界

GDPの計算方法って、昔からずっと変わらないの?

実は、GDPの計算方法は時代とともに少しずつ変わってきているんだよ。
GDPが最初に使われだしたのが1930年代で、世界恐慌がきっかけと言われているよ。
そのときの計算方法は今と全然違っていて、政府の支出がGDPに含まれなかったりしていたんだ。
それから、第二次世界大戦や1970年代のオイルショックなどの重大な出来事をきっかけに、度々計算方法が見直されてきたんだ。
そして今でも頻繁に見直しがされているよ。

計算方法が違っているということは、今と昔のGDPを比較した場合、同じ基準では比較できないっていうこと?

そう!単純に数字を並べただけでは比較できないんだ。
昔は経済構造が今より単純だったから、農業や製造業で生み出される価値を測るだけで良かったんだ。
だけど、看護師や会計士、ソフトウェア開発者といったように、サービス業が多様化するにつれて、GDPの計算もそうした無形の資産を無視できなくなって、計算に含めるようになってきたんだ。
だから本当の経済成長を知るためには、昔のGDPにサービス業など無視されてきた要素を足し戻してあげる必要があるんだよ。

でも、そんな昔のデータなんて残ってないんじゃない?

うん、実は信頼に足るデータというのはほとんどないんだ。
そもそも、昔はデータの収集能力にも限界があっただろうし。
だから、昔の経済状態は推測に基づいてしかわからないんだよ。
故にどれだけ経済が成長したかについて、正確な情報を把握することはできないんだ。

生産的活動と非生産的な活動を分ける限界

サービスとしての価値もGDPに含めるってことは、お母さんがいつもやっている家事もGDPに入るの?

いや、家庭内労働は実際、GDPにはカウントされないんだ。

でも、お金を払ってお手伝いさんにお願いしたときはカウントされるんでしょ?

そうなんだ。お金のやり取りが発生するからね。
お金のやり取りが発生しない経済活動は、非生産的とされてしまうんだ。
家庭菜園で野菜を収穫したりお父さんが家の修繕した場合も同じだね。

実際は生産的なことをしているのに、非生産的にされてしまうなんてひどいなー

そうだねー。ただ、帳簿に載らない作業を把握するのは難しいんだよ。
これもGDPの限界といえるかもしれないね。

持続可能性としての限界

GDPを増やすのって、木を切ったり空気を汚したりして環境を犠牲にしているんだよね?

そうだね、枯渇資源を消費したり環境を犠牲にした結果としてGDPが増えている側面があるよね。
本当はその犠牲分をGDPから差し引くべきなんだろうけど、計算上は経済活動によって生み出された価値を測ることしかできないので、GDPの数字には反映されないんだ。

なんだかGDPが増えても、素直に嬉しくなれないなー

そうだね、ゆいちゃん!
GDPは単に生産量や消費量を数字で表しているだけで、利便性の向上や生活の豊かさといった質の部分までは見られないんだ。
だから、それを補うために、様々な角度で見られる指標がGDPの他にもたくさんあるんだよ。

まとめ

今日はGDPの概念と役割、そして限界についてお話ししてきたけど、どうだった?

うん、GDPがとても重要な役割をしている反面、色々と限界があることもわかったよ!

そうだね、GDPってそれを見れば何でもわかる万能の数字ではないけど、やっぱり経済活動の動向を知るための最も重要な指標であるという位置づけは、昔からずっと変わっていないんだ。
政府の政策だってGDPを参考に決められているんだ。

GDPの限界を知ったうえで、賢く活用していくことが大事なんだね!

コメント

タイトルとURLをコピーしました